1941年、SERVICE SHOES, TYPE I をより野戦に適した物に改良すべく、ラバーソールの採用を決定した米軍は、SPEC.化に向け、材質、厚さ、形状、靴底への取り付け方式の検討、設計に着手し、ラバーソールのトレッド設計が、車のタイヤトレッド設計と目的を一にする事から、その設計を当時の軍納入の大手タイヤメーカーに委託し、後にその生産を主としてそれらのタイヤメーカーに発注した。当時このラバーソールの発注を受けたタイヤメーカーとして知られる所では、GOOD YEAR社、B.F.GOODRICH社、UNITED STATES RUBBER社等が挙げられる。
理想的なソールグリップを得るべく採用されたTYPE II ソール、トレッドデザインは先部に荒目の楔状、中央部に深い網の目状、その周りは先部より浅い楔状、の3種の異なったトレッド・パターンが象られた。土踏まずに近い部分には“U.S. ARMY”の文字と使用されるべき靴サイズが、“8 ” “8 1/2”というように2種表示され、これは1種のソールが2種の靴サイズに用いられた事を表す。このソールデザインは以後変わる事なくTYPE II の生産終了時迄同じ物が使用された。又、その形状、全てのデザインにおいて製造メーカーによる差違は殆どなく、そしてメーカー名は表面には一切表示されず、裏面のみ省略形で小さく刻印された。このハーフソールはTYPE II と同時期に採用されたパラブーツ(正式名:BOOTS, JUMPER, PARACHUTE)の初期の物にも多く使用されたがパラブーツに関しては、後にメーカー別、製造年度別に異なった多くのヴァリエーションの物も使用された。
|
M-43に用いられたフルソールに関しては、MASHが復刻したチェーンとリングが象られた LIGHT TREAD®ソールは他のメーカーの物とは大きく異なり、そのユニークなデザインはいかにも40年代のアメリカ的である。残された写真資料、現存する実物を見る限りにおいてM-43プロトタイプ(トゥキャップ付)及びM-43・初期(リベット付)の物に限定使用されたようだ。このミリタリー色をあまり感じさせないトレッドデザインとその使用された時期を合わせ考えれば、当時、米軍においてM-43フルソールの基本的なトレッドデザインが決定する前にM-43の製造がスタートし、その間、民間のデザインの物を使用した事も充分考えられる。以後のトレッドデザインはソール前部分のセンターに通称ダイヤモンドパターンと呼ばれるトレッドが象られた物に標準化され、そしてそのダイヤモンドパターン以外の部分の細かく浅いトレッドは製造メーカーそれぞれ独自のデザインの物が使用された。U.S. ARMY の文字はフルソールには表示されず、ハーフソールにはなかった製造メーカーのトレードマークが土踏まず部分に表示された。このダイヤモンドパターン・フルソールはバックルブーツにも使用された。
ヒールに関してはTYPE I では茶色のラバーヒールも多く使用されたが、TYPE II 以後は全て黒のラバーヒールが用いられた。その表面のトレッドデザインは軍で規定された形跡はなくメーカー名あるいはそのトレードマークがヒール・トレッドとして象られた物が多い。ヒール固定用釘穴の数は常に13(片側)でありその位置も各メーカー共通であることから釘穴に関しては規定されていたようだ。ヒールに関しては TYPE II、TPE III、バックルブーツの全てにおいて同型式の物が多く使用され、NAVYの物にも多く見られる。又、空挺ジャンプブーツのヒールはジャンプ時のひっかけ防止のためヒール前部は通常の物のようにはカーブせずストレートであり、そして斜めに勾配が付けられていた。MCのラフアウトブーツに使用されたヒールは取付釘ガイドホールのない物が多く、これはMCの主作戦地が多湿の太平洋戦線であったため釘ガイドホールからの水の進入を嫌った物だと考えられ、又、材質的にもMCのソール、ヒールは他の物と異なり、成型時に滑り止め用に細かくシュレッドされた綿布などが混入された物が多かったようだ。 |