クラウン  
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A-2・ac-21996
1941年製
AERO LEATHER CLO.
 
CROWN・大戦後期型
1942〜44年頃製
   
 

 
L-2
AMERICAN PAD & TEXTILE CO.
2nd モデル・#5
スプリングスライダー
 
B15-C MOD.
2nd モデル・#7
スプリングスライダー
   
 

 
B-15D
LION UNIFORM CO.
2nd モデル・#7
オートロックスライダー
 
MA-1 8279D
1964年製
ALPHA IND.
   
 
製造方式、TEETH 設計、スライダーのロック機構及びデザイン・・・・・その全てが他のジッパー・メーカーと大きく異なり、ジッパー業界の異端児ともいえるこのメーカーはTEETH 製造方式においてTALONを筆頭に当時の数多くのジッパー・メーカーが全てプレス方式をとったのに対し、1930年代初めと考えられる創業スタート時から1960年代半ばその終焉に至る迄、常にダイキャスト(高圧鋳造)方式でのぞんだ。
スタート時のダイキャスト方式によるTEETHデザインはミリタリーにおける袖階級章(シェブロン)のV字型を連想させる所からシェブロン型とも呼ばれ、この個性的なシェブロン型のTEETHと共に用いられたスプリングが組み込まれたスライダーの独特の機構、優雅なデザインは、製造され60年を経過した現在においても多くのCROWNジッパーファンを魅了して止まない。このシェブロン型のTEETHは強度的には若干の問題もあったようであり、その後、このメーカーはTEETHデザインのモデルチェンジを余儀なくされるが、このまさにアール・デコ様式の優美な工芸品ジッパー、CROWN・大戦初期及び後期型にはCROWNジッパーファンならずとも若干の強度的な問題点を補ってあまりある魅力を認めずにはいられない。
1944年3月、大戦後期シェブロン型からモデルチェンジされ発表されたCROWNジッパー2ndモデルに、初期/後期型の優美さを見る事は出来ないが、このメーカー独特の曲線を基本としたアール・デコ調のデザイン・スタイルは2ndモデルにおいても充分生かされ、まるで中世の甲冑をイメージさせるがごときグレイ色の鈍い光沢を放つ、楔形のTEETHは強度においても、他のどんなジッパー・メーカーの物より優れ、おそらくジッパー開発の歴史において、最も個性的かつタフなTEETH設計と言っても過言ではない。唯一ともいえる欠点はこのメーカーが終始こだわり続けたダイキャストによる製造方式が他のメーカーの取るプレス方式に比較しジッパーテープの長さ調節に関し難があるという点であり、この事はコスト面にも少なからずの影響を与えた。最終的には多くの長所を持ち、デザイン的にも素晴らしいCROWNジッパー2ndモデルも大量生産、低コストの時代の波には勝てず、常に独創的であり続けたこのジッパー・メーカーは1964年、MA-1/リバーシブル、Dタイプ用ジッパーの製造を最後に、その約30年間のジッパー・メーカーとしての操業を終えたのである。
ちなみに、"CROWN"の名称は基本的にはジッパー自体のブランド名であり、この独創性溢れるジッパーを実際に設計製造したメーカー名としては通常 "The Spool Cotton Company"(745 5th Ave., New York, N.Y.)が上げられる。WWII時、"CROWN"ジッパーの製造メーカーとしてパッケージ、ラベル、広告等に登場するこの"The Spool Cotton Company" 自体は "J & P Coats・Clark's" という総合資材メーカーの一員であり、1950年代末頃には"The Spool Cotton Co." のメーカー名は軍納入ラベルから姿を消し、変わって "Coats & Clarks Sales Corp." の名称がメーカー名としてラベルに印刷される。"CROWN"ジッパーのスライダーの引き手に時に見ることができる"CC"の文字はこの社名のイニシャルをあらわす。又、1953年頃には"CROWN"ジッパーの軍納入パッケージに"Crown Fastener Corp. "の名称がメーカー名として印刷された時期があり、CROWNという名称をメーカー名として呼称する事もあながち間違いでは無いようである。


当時の広告とパッケージから考察する伝説のジッパー “CROWN”

【1944年・3月/ THE SPOOL COTTON 社広告】

左は1944年3月に発行された当時のアメリカの航空雑誌"AERO DIGEST"に掲載されたThe Spool Cotton 社の広告で、その内容は新しく開発発売したCROWN ジッパー・2nd モデルがいかに優れた物であるかを紹介、アピールする物である。特にアピールされている5つの長所として、

○ダイキャスト(高圧鋳造)方式であるためTeeth(務歯)がテープに完全に熱着し、従来の他社のジッパーのTeeth のようにテープから外れ落ちる事がない。

○上下の区別が無いTeeth設計であるため(通常のジッパーメーカーのTeethは上下の区別がある)、スライダーをどちらの方向に取り付ける事も可能であり、バッグやフライトスーツ等に多く求められるような2個のスライダー間をオープンさせる事が容易に出来る。

○噛み合わせが非常に優れたTeeth設計であるため、テープを鋭角に曲げても噛み合わせが外れる事がない。

○新しく開発されたスライダーのロック機能が優れている事。

○錆びに非常に強いTeethである事。

この広告からThe Spool Cotton 社がCROWN ジッパーをシェブロン・スタイルから2nd モデルにモデルチェンジしたのが1944年3月に極めて近い時期であった事が推察でき、又、この広告にはThe Spool Cotton 社が J. & P. Coats・Clark's グループの一員である事が明示されている。



【1952年・9月/ CROWN 2nd モデル・#7、オートロックスライダーBOX】
上左は、1952年9月梱包されたCROWN、2nd モデル、オートロックスライダー付き #7、MIL. SPEC. フロントジッパーの未開封BOX。右はその中箱と中身のデッドジッパー。



 
外箱の梱包 DATE マーキング
9/52 (1952年9月)
 
 
右の中箱に張られた白ラベルの拡大、米軍との契約者名としてはThe Spool Cotton社 が、製造メーカー名としてはCrown Fastener Corp. が明記されている。ここでいうCorp.(Corporation)は日本で言う株式会社を指し、この当時Crown FastenerはThe Spool Cotton社の子会社的ではあったにせよ、形式的には独立したジッパーメーカーであったと推察できる。



【1962年/ CROWN 2nd モデル・#7、リバーシブルスライダーBOX】
上左は、1962年梱包され、Coats & Clarks 社から Skyline Clothing 社に送付されたCROWN、2nd モデルリバーシブルスライダー付き #7、MIL. SPEC. フロントジッパーの未開封BOX。右はその中箱と中身のデッドジッパー。



To : Albert Turner Co.
  C/O Skyline Clothing Co.
  18 Main ST. Beacon N.Y.
外箱に張られた梱包ラベルとシッピングシール。ブルーのシッピングシールの送り先欄には写真では少し読みにくいが、左記のように書き込まれている。中身のジッパーのタイプと製造時期(1962年)、送り先、からこのリバーシブルジッパーはSkyline Clothing 社製のMA-1 Cタイプに使用されるべく送付された物であった事が推察される。只、この本来の受取人であるAlbert Turner 社Skyline Clothing 社とのこのリバーシブルジッパーにおける関係が少々難解であるが、説明が長くなる事、Crownジッパーの背景とは特に関係がない事から、この謎解きに関しては後日別項に譲りたい。


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