ここでは本格的なグッドイヤーウェルト方式により製造されるM-42、M-43のその複雑な60以上もの全ての行程を紹介する事はとても出来ませんが、皆様に本格的な革靴に対してよりご理解いただければと、その工程の概略を説明させていただきます。
1.抜型によりアッパー各パーツが革材よりカットされる。
2.アッパー縫製。
3.カウンターをいれられたアッパーは中底を取り付けた木型にかぶせられ吊り込み機で成型される、この工程は吊り込み工程と呼ばれる。
4.成型されたアッパーは細革(ウェルト)、中底に立てられたリブと共にチェーンステッチですくい縫いされ中底、アッパーが一体となる。
※この工程がグッドイヤーウェルト方式の中心をなす物で、詳しくは下左図を参照下さい。
5.フィラー(前中)と呼ばれるクッション材(コルク)、靴の背骨ともいうべきシャンクが中底裏に組み込まれ本底革とラバーソールが細革(ウェルト)にロックステッチで縫い合わされる。出し縫いと呼ばれる工程により、アッパー、中底、本底、ラバーソールは完全に一体となる、詳しくは下右図を参照下さい。
6.出し縫いにより取り付けられた本底、ラバーソールはM-42は16本(片方)、M-43は18本(片方)の釘が打ち込まれ完成される。


グッドイヤーウェルト方式の歴史とその特徴
 19世紀後半チャールズ・グッドイヤーJr.が多くの発明家を集め開発した製靴方式で、アッパー、中底リブ、細革(ウェルト)を共にすくい縫いし、その後にクッション材、シャンクを組み込み、さらに細革(ウェルト)と本底を縫い付ける複式縫いで、強度と安定感に勝れる。一般的にコバが張り出し縫い目が見える。適度な重さがあるため、長時間履いても疲れず、給排湿性にも優れる。現在でもトラディショナルな高級紳士靴や、強度と安定感を要求されるアウトドアブーツにはこの方式が多く用いられるが、その方式の工程の多さ、製造に熟練を要する事から世界的にこの製靴方式で製造出来る靴メーカー、靴職人の数は減少する一方である。USミリタリーにおいてはこの製靴方式の長所が全て軍靴に要求されるべきものである事から、この方式が開発され広く用いられ始めた1900年頃より、それ迄使用していたマッケイ方式からグッドイヤーウェルト方式に変更し、以後1950年代始め迄この方式でほぼ全てのサービスシューズが製造されたが、その後USミリタリーといえどもコスト省略化の時代の波に勝つことが出来ず、低コストで、大量生産が可能な接着剤を多用し、底付け工程を大幅に省略したセメント方式やマッケイ方式に似たリトルウェイウェルト方式に変更された。現代において安いという利点を持つ物の殆どの靴がこのセメント方式や、見た目のみグッドイヤーウェルト方式に似せたセミ・グッドイヤーウェルト方式で製造され、そして修理される事なく使い捨てられる中にあって、私共が今回MASHオリジナルM-42,M-43両タイプの復刻にあたり、本格的なグッドイヤーウェルト方式にこだわりぬいたその理由は、皆様が実際にこれらの靴に足を入れ、そして一歩踏み出した時に必ずやご理解いただけるものと固く信じる所であります。
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